人材派遣で起こりやすいトラブルとは?

派遣システムは派遣元、派遣先、派遣スタッフの三者関係で成り立っているため、不安定な関係にあり、問題が起こりやすくなっています。トラブルとして多いものに「派遣元の対応に関するもの」「契約期間に関するもの」などがあります。

派遣労働関係には2つの契約が介在します。1つは派遣元と派遣先との間で交わされる“労働者派遣契約”、そして、もう1つは派遣元と派遣スタッフの間で交わされる“派遣労働契約”です。中途解約の問題のほとんどは、派遣先が何らかの事情で労働者派遣契約の解約を申し出たために、その派遣契約をベースに派遣元が派遣スタッフと締結していた派遣労働契約を解約しようとするときに発生します。派遣元はベースとなる派遣契約が解除されたのだから派遣労働契約を解除するのも当然だと考えるかもしれませんが、これら2つの契約は別個のものです。

2つの契約の間に密接な関係が存在することは否めませんが、派遣契約が解除されたからといって、自動的に派遣労働契約が解除されるものではありません。期間の定めのある雇用契約(=派遣労働契約)の場合、契約期間中はやむを得ない事情がない限り、解除できず、当事者の一方の過失によって契約を解除したときは、損害賠償の責任を負うというのが民法の原則です。この点をきちんと理解していないと、トラブルとなってしまいます。不幸にして派遣契約の解除が発生したとき、派遣元はスタッフに対し別の仕事を紹介しなければならず、それができない場合は、休業手当(平均賃金の60%)を支払う必要があります。

派遣事業に挑戦するメリット

派遣会社の経営上のメリットとは何でしょうか。

第一に、派遣事業は“固定費”を抱えないですむというメリットがあります。派遣スタッフの仕事がなければ、給料を支払わなくてよいからです。(ただし、特定労働者派遣事業の場合は、そうとはいきません)景気が悪化して派遣先のオーダーが入らなくなればそれはもちろん厳しい経営環境をむかえることにはなりますが、在庫を抱えないですむために、不況倒産という悲劇はあまり例がありません。もちろん、経営者の放漫経営などが直接の引き金となって廃業に追い込まれることはありますが…。

第二は、事業に時代性があるというメリットです。バブル不況以後の産業界はリストラを行い、組織のスクラップ・アンド・ビルドは進展しています。そうした中で、仕事における常用労働者と非常用労働者との区別が明確となってきています。非常用労働者の確保で、派遣会社に依存するケースは増加する一方だろうと思われます。また、働く側の就業意識も多様化してきて、非常用労働を求める人も増えています。

第三として、事業に社会的意義があるというメリットです。派遣システムが企業のリストラに側面的にプラスになっていて、かつ、雇用の促進にも貢献しています。雇用流動化時代にあっては、派遣で働くしくみはその意味で大いに威力を発揮しつつあります。それに何より、多くの派遣スタッフが「派遣」というしくみを支持しています。今や、派遣は社会になくてはならない制度になっています。

実務で役立つ“文書契約”の進め方

派遣のしくみは、派遣先、派遣元、派遣スタッフの三者で構成されています。すなわち、派遣スタッフは派遣元と派遣労働契約(雇用契約)を交わし、派遣先と派遣元との間で締結される労働者派遣契約にしたがって派遣先事業所に配属され、派遣先の指揮命令にしたがって業務の処理を行ないます。

派遣スタッフの雇用主は派遣元ですが、指揮命令を出すのは派遣先です。雇用上の問題の一切は派遣元が負い、仕事の進め方と日々の管理、評価については派遣先がその責任を負うことになります。派遣先、派遣元が派遣スタッフの使用と雇用を役割分担するわけですから、双方の密接な連絡と協力が求められます。

派遣を受け入れるにあたって、派遣先は派遣元との間で労働者派遣契約を取り交わさなければなりません。契約書の書式は派遣元によってさまざまですが、契約の内容は労働者派遣法で定められており、全て同一です。次に契約と管理に必要な手続きや心得を、派遣先を中心にして説明していきます。

◆ 労働者派遣契約の手順

(1) 基本契約を取り交わす
  基本契約について法律の定めはありませんが、商取引上で派遣先、
  派遣元双方が文書で確認しておいた方がよい場合に取り交わします。

(2) 労働者派遣契約書を取り交わす
  労働者派遣契約書の書式は通常の契約書と同様です。
  ただし、記載すべき内容は労働者派遣法で定められています。

 [労働者派遣契約書に記載すべき主な内容]
 ・ 派遣労働者が従事する業務の内容
 ・ 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地
 ・ 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
   など

(3) 派遣先の責任者を選定する
  派遣システムを適正に機能させる上で、派遣元同様、
  派遣先に対しても責任者を置くことを法律で定めています。
  派遣先責任者は企業の規模などにもよりますが、人事課長またはそれに準ずる人がその任にあたり、
  派遣スタッフの就業管理を行っています。

◆ 管理の手順

(1) 派遣先管理台帳の整備と管理を行う
  派遣先は人材派遣を導入する際に「派遣先管理台帳」を作成する必要があります。
  様式の指定は特になく、派遣元が派遣先用に作成した管理台帳の用紙を用意しているケースが
  多いようです。また、3年間の保存義務があります。

(2) 就業現場の指揮命令者を選考する
  派遣契約を締結すれば、派遣されたスタッフを有効に活用する指揮命令権が派遣先に発生します。
  この場合、業務処理を就業規則で直接指導する担当者を「指揮命令者」と呼んでいます。
  通常、スタッフが直接派遣される現場の課長、係長クラスが担当します。

(3) 指揮命令者も契約内容を確認する
  派遣スタッフに契約以外の仕事をさせてしまうと違法行為となり、トラブルの原因となりかねません。
  契約に定めた業務に付随する、いわゆる、“周辺業務”の指示は程度の問題と解釈されますが、
  全く異なる仕事を命じて、それが派遣契約で明示した仕事の量を大幅に上回る場合には、
  問題が生じかねません。したがって、指揮命令者も契約内容をよく確認しておく必要があります。

◆ 派遣スタッフへの就業条件の明示

  派遣元は、派遣が決定した派遣スタッフに対し、労働者派遣をする旨およびその派遣スタッフに係る就業条件を
  明示しなければなりません。明示すべき主な就業条件は次のとおりです。

 ・ 派遣労働者が従事する業務の内容
 ・ 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地
 ・ 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
   など

  就業条件の明示は、労働者派遣に際し、あらかじめ、明示すべき事項を書面に記載し、
  その書面を個々の派遣労働者に交付することにより行わなければなりません。

人材派遣会社の成功ポイント

◆ 「百貨店方式」から「専門店方式」へ

大手派遣会社のような「派遣なら何でも対応します」という「百貨店方式」ではなく、特定の業務に特化した「専門店方式」を考える必要があるでしょう。ただ、専門特化した場合にはメリットもデメリットもあります。メリットは、特徴という点で同業他社との差別化が明確となり、顧客に対するアピールは強力になります。デメリットは売上高が百貨店方式と比較して伸びにくいという点です。しかし、特に専門性の高い業務を取り扱う専門店方式の場合、派遣料金を高めに設定することもできますし、高いクオリティーが評判になれば、売上高、利益率とも伸びてきます。実際、アメリカで近年注目されている派遣会社の多くは、専門店方式の会社です。

◆ 「受注型営業」から「提案型営業」へ

人材派遣会社の収益のシステムは仕入れと販売にあります。仕入れとはスタッフ募集であり、販売とは派遣先の確保です。派遣事業はまず「仕事ありき」からスタートします。派遣先の仕事が発生してそれを処理するスタッフを募集して配置するという手順だからです。ゆえに、仕事開拓の営業社員の成否が売上高をあげるキー・ポイントとなります。これまではフットワークのよい営業社員が一日何十件という派遣先を訪問して受注する営業が主流でしたが、同じ手法で営業開拓しても始まらないという考えが芽生えてきました。すなわち、派遣先の派遣活用事例を体系化して、それをサンプルにセールスするという提案型営業です。その方が顧客にはわかりやすいというメリットがある反面、派遣元としては需要を創出する点でメリットがあります。

◆ 60歳以上の高齢者の活用

信販会社の督促部門に高齢者を活用している事例があります。督促業務はほとんどが電話を利用するデスクワークなので、体力はいらないし電話でのやり取りはベテランだけにうまく、まさにうってつけです。小さいスペースで掲載する募集広告にたくさんの高齢者が応募してくるため、採用にかかるコストも安上がりというメリットもあります。事務部門のスタッフというと「女性スタッフ」というのは誤りで、コストダウンを図り、高齢者の雇用促進という社会的意義を満足させる商品作りは知恵の差といえるでしょう。

◆ 派遣先メリットの具体的実現

派遣先が派遣を受け入れるメリットとは、第一に、常用社員と比較した場合のコストメリットであり、第二に、雇用責任が軽減されるメリットです。しかし、派遣の受入れ人数が増えていくとやはりコストメリットはあまりないことに気づき、その打開策が必要になってきます。ある派遣先に派遣しているA社が特定の仕事を処理するのに10人を要していたのを8人で対応可能な提案を行い、実際に業務分析を行って2人の減員を実現させたB社などは派遣先のメリットを具体的に実現させたよい例です。オーダーのすべてを派遣先に委ねず、自ら研究して顧客満足を図らなければなりません。

人材派遣会社の経営のしくみ

人材派遣会社の経営のしくみは大きく分けて、“販売部門”、商品の“仕入部門”、請求・仕入管理や社員の給与管理を行う“業務部門”の3部門で成り立っています。

◆販売部門

この部門は配属された営業担当者が、日々、派遣活用を勧めるための顧客開拓と増員拡大を目的とした取引継続中の既存顧客フォローに動き回っている部門です。営業担当者として新卒を採用する派遣会社もありますが、スタッフとの人間関係構築力が必要であったり、顧客である企業の人事部がそれなりの役職を持った人たちでもあるので、新規開拓といえどもそこそこの年齢の営業担当者が必要となります。通常、営業担当者は新規開拓をしながら取引の始まった企業のフォローも行い、その担当数は2けたに上る場合もあり、また、営業担当者の業務経験年数によってその担当件数に差が生じると考えられます。既存顧客フォローでは派遣先担当者にスタッフの評価や増員の予定はないかなどを取材したりします。そのついでに就業中のスタッフにも顔を出して「がんばってますか」などと声をかけるケアも忘れてはなりません。

◆仕入部門

この部門で働く人たちは、コーディネーターやカウンセラーと呼ばれています。派遣スタッフと派遣先とをコーディネートしたり、派遣スタッフがこのシステムで働く上での悩みをカウンセリングするなどの意味でこのように呼ばれています。この部門で働くコーディネーターの多くは女性で、20代半ばから30代後半までの女性が大半を占め、登録面接を通してスタッフのキャリアや指向を判断したり、営業担当者が受注した派遣先希望との折衝を図ったりしています。また、コーディネーターは登録予備軍からの電話問い合わせとその予約、面接インタビューとスキルチェックなどもこなしています。さらに、スタッフ募集記事作成にあたっては広告代理店との折衝もこの部門が行うことが多いようです。

◆業務部門

この部門は、一般企業でいえば人事、総務、請求と支払い管理といったところでしょうか。担当業務は大きく分けて3つあります。

1. 請求管理

つまり、派遣スタッフがつけるタイムシートの管理です。

2. 給与管理

タイムシートを基にした給与の管理です。タイムシートはそれぞれ派遣会社が独自のフォーマットで作成しており、4枚つづり(1.スタッフの控え 2.派遣先の控え 3.派遣元の控え 4.請求書に添付するための控え)になっているケースが多いようです。

3.行政への諸手続き事務

許可申請手続きは派遣事業開始の時に行われていますが、この事業にはその他にも法律で定められた事業報告と更新手続きがあります。

中高年派遣と女性の就業支援

■シニア派遣

これまで、派遣スタッフは、年齢制限はないものの、結果的に20代後半から30代前半が主流でした。派遣先企業のニーズや要求水準、労働者のニーズや意識の点から、それが妥当だったともいえます。しかし、状況は変わりました。豊富な実務経験や人生経験、管理能力、コミュニケーション能力、マナーや常識が求められる職種や立場、そして、高い専門的技術や知識の必要性が認められるようになったからです。ときには、派遣先企業から組織の潤滑油や若年者の指導者、管理者、相談員としての役割を期待され、40歳以上のスタッフが望ましいとの要望さえあります。特に一部のベンチャー企業のようにアイデアや企画力に優れていても、管理、運営面に不安を抱えている企業にとって、その存在は得がたいものです。

さらに、2007年問題の存在により、定年を迎える団塊世代の多くは登録スタッフとしての可能性を持ち、それらの世代を一気に失う企業側には、そのニーズがあるということになります。それを好機ととらえ、行動を起こすことができれば、派遣会社、派遣先企業、派遣スタッフの三者とも利点につながることでしょう。

■女性スタッフの就業支援

一般労働者派遣の場合、事務系業務への派遣が多く、女性が主流です。しかし、従来の対応では他社との差別化ができなくなっています。女性のライフスタイル、意識の変化や社会の女性に対するニーズの増大によって、女性が働きやすい環境の整備や優秀な女性スタッフを確保するための対策が必要になったからです。

夫の「扶養内」を求める主婦には、その専用窓口やライフプランの相談コーナーを設ける派遣会社も多くなっています。育児中であれば、派遣会社が直接託児所を開設したり、提携託児所の紹介をすることもあります。また、育児、介護などのため、仕事を中断していた人を対象に復帰対策講座の実施、託児所付きの登録会開催、在宅での仕事の紹介など、多様な試みが始まりました。さらに、自社内にリラクゼーションスポット、ネイルサロンを開設、趣味の講座を開催するなど、女性向け福利厚生の充実を図る会社さえあります。

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