派遣のしくみは、派遣先、派遣元、派遣スタッフの三者で構成されています。すなわち、派遣スタッフは派遣元と派遣労働契約(雇用契約)を交わし、派遣先と派遣元との間で締結される労働者派遣契約にしたがって派遣先事業所に配属され、派遣先の指揮命令にしたがって業務の処理を行ないます。
派遣スタッフの雇用主は派遣元ですが、指揮命令を出すのは派遣先です。雇用上の問題の一切は派遣元が負い、仕事の進め方と日々の管理、評価については派遣先がその責任を負うことになります。派遣先、派遣元が派遣スタッフの使用と雇用を役割分担するわけですから、双方の密接な連絡と協力が求められます。
派遣を受け入れるにあたって、派遣先は派遣元との間で労働者派遣契約を取り交わさなければなりません。契約書の書式は派遣元によってさまざまですが、契約の内容は労働者派遣法で定められており、全て同一です。次に契約と管理に必要な手続きや心得を、派遣先を中心にして説明していきます。
◆ 労働者派遣契約の手順
(1) 基本契約を取り交わす
基本契約について法律の定めはありませんが、商取引上で派遣先、
派遣元双方が文書で確認しておいた方がよい場合に取り交わします。
(2) 労働者派遣契約書を取り交わす
労働者派遣契約書の書式は通常の契約書と同様です。
ただし、記載すべき内容は労働者派遣法で定められています。
[労働者派遣契約書に記載すべき主な内容]
・ 派遣労働者が従事する業務の内容
・ 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地
・ 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
など
(3) 派遣先の責任者を選定する
派遣システムを適正に機能させる上で、派遣元同様、
派遣先に対しても責任者を置くことを法律で定めています。
派遣先責任者は企業の規模などにもよりますが、人事課長またはそれに準ずる人がその任にあたり、
派遣スタッフの就業管理を行っています。
◆ 管理の手順
(1) 派遣先管理台帳の整備と管理を行う
派遣先は人材派遣を導入する際に「派遣先管理台帳」を作成する必要があります。
様式の指定は特になく、派遣元が派遣先用に作成した管理台帳の用紙を用意しているケースが
多いようです。また、3年間の保存義務があります。
(2) 就業現場の指揮命令者を選考する
派遣契約を締結すれば、派遣されたスタッフを有効に活用する指揮命令権が派遣先に発生します。
この場合、業務処理を就業規則で直接指導する担当者を「指揮命令者」と呼んでいます。
通常、スタッフが直接派遣される現場の課長、係長クラスが担当します。
(3) 指揮命令者も契約内容を確認する
派遣スタッフに契約以外の仕事をさせてしまうと違法行為となり、トラブルの原因となりかねません。
契約に定めた業務に付随する、いわゆる、“周辺業務”の指示は程度の問題と解釈されますが、
全く異なる仕事を命じて、それが派遣契約で明示した仕事の量を大幅に上回る場合には、
問題が生じかねません。したがって、指揮命令者も契約内容をよく確認しておく必要があります。
◆ 派遣スタッフへの就業条件の明示
派遣元は、派遣が決定した派遣スタッフに対し、労働者派遣をする旨およびその派遣スタッフに係る就業条件を
明示しなければなりません。明示すべき主な就業条件は次のとおりです。
・ 派遣労働者が従事する業務の内容
・ 派遣労働者が労働者派遣に係る労働に従事する事業所の名称及び所在地
・ 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
など
就業条件の明示は、労働者派遣に際し、あらかじめ、明示すべき事項を書面に記載し、
その書面を個々の派遣労働者に交付することにより行わなければなりません。
→ 労働者派遣事業コンサルティング
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